短期間に相次いだ墜落事故で航空業界を賑わしているボーイング(Boeing)737MAX-8。最初に同型機(B737 MAX-8)の運航停止したのは中国でした。中国が運航を停止してから3日も経たない内にあっと言う間に米国を除くほぼ全て[…]
ご存知の通り、ボーイング737 MAXの運行停止は大きな影響を与えています。
しかし、ネガティブな影響ばかりではありません。今回の記事では、ボーイング737 MAXの運行停止が航空業界にもたらすポジティブな影響について書きます。
737MAXの運行停止がインドの航空業界にもたらすポジティブな影響
Why The Boeing 737 MAX Ban Is Good For India…
「なぜ737MAXの運行停止がインドにとって良いのか」という記事がSimpleFlyingに掲載されていました。内容を要約すると下記のようになります。
- インドには巨大な人口を背景とする巨大市場があるものの、中国やヨーロッパと地続きになっており地上インフラの利便性も高い。結果、安価な地上インフラと戦うために価格競争が激化。
- 737MAXが運行停止になることによって供給が減少し、航空券の価格が上昇している
- 昨年比で65%も航空券の価格が上昇した路線がある
- たった2日で航空券の価格が50%上昇した路線もある
つまり、需要と供給がバランスしないため、安価に航空券を設定せざるを得ず、事業者は苦戦を強いられてきたのですね。「737MAXが運行停止となることでインドの市場に供給される航空券(座席数)が減少し、短期間で航空券の価格が上昇した」と言うのが大筋のストーリです。
737MAXを運航している特定の事業者には当然ネガティブな影響ではありますが、インドの航空産業全体で見ればポジティブになり得るということです。その辺りの具体的な計算は経済学者にお任せしますが・・・。
ちなみに、インドのナショナルキャリアであるエアインディアは巨額の債務を抱え、経営破綻しており、政府から資金注入を受けています。
LCC のビジネスモデルに対する警鐘
LCCはどのようにして低価格を実現しているのか?
LCCのビジネスモデルについては、ここでは深く触れませんし、個々の事業体や国によっても色々なケースがあるので一括りには出来ません。
しかし、一般的には、エアラインビジネスは固定費ビジネスですから、固定費をカットすることでコストを削減するとともに、一機あたりの稼働率(回転率)を上昇させることで低価格な運賃を実現しています。フワッとしていて、何も言ってないに等しいのですが、ここではこれで次に進むことにします。
固定費をカットするためにLCCが取る代表的な戦略として次のようなものがあります。
- 運航機種の単一化
- パイロットを含む運航乗員の訓練コストの削減(各機種毎に訓練する必要がなくなります)
- 整備コストの削減(整備マニュアルやパーツを色々な種類用意する必要が無くなる、、、等)
- 運航コストの削減(使用する燃料や作動油を単一化することで調達コスト削減、、、等)
- 運行間隔を短くする(着陸後40分で次の目的地へ向かう、、、等)
余談ですが、運航乗務員の訓練費は販管費として計上されるはずですので、使用機材を単一化することで複数の機材を使用するエアラインと比べて営業利益率を押し上げる効果があることでしょう。
737MAXの運行停止で浮き彫りになったLCCの問題点
「単一機種で運航する」ということが大きな問題になりかねません。
737MAXのみで運航していたエアラインは、現在何も出来ない状態です。今回のようなケースをカバー出来るような保険や代替機に関する契約等々を該当するエアラインは締結しているものと推察しますが、本業である飛行機を飛ばすことが出来ないことは自明です。
今回の件は、LCCのビジネスモデルを考え直すきっかけになるのかも知れません。特に新造機だけで運航するようなエアラインは今後は減るかも知れませんね。きっかけという意味では737MAXの運行停止は航空業界にはポジティブな影響も与えるでしょう。
まとめ
まだまだ737MAXは渦中です。
航空機事故は一度事故が発生すると非常に大きな影響を多方面に与えます。しかも、今回は、同一機種で、同じようなシナリオで、同じく墜落事故。影響が大きくないハズがありません。
今後の動向も注視していきたいですね。