パイロットの年収が気になる皆さん、こんにちは笑!当サイトではパイロットの年収を統計とインタビューから考察した記事を多く読んで頂いています。
「高級取り」とされる職業は多くあります。このページを訪れている方の頭には、その1つとして「飛行機のパイロット」が浮かんでいるのはではないでしょうか。そして、それは「エアラインパイロット」のはずです。航空業界の方でなければ「飛行機のパ[…]
パイロットになろうとしている方は勿論、パートナーがパイロットだったり、「パイロットはどうせ高給取りなんだろ。調べてみたろ!」という方まで、沢山の方々がパイロットの年収に興味があることへの現れかと思います。
今回は前述の記事では取り上げることが出来なかった「日本航空(JAL)」のエアラインパイロットの年収について、事実(記載の数値は全て有価証券報告書から引用)から考察します。
併せて、全日本空輸(ANA)、スターフライヤー(Star Flyer)、SKYMARK(スカイマーク)の有価証券報告書を比較して、日本国内のエアラインパイロットの年収の実際の所を考察してみましょう。
読み進めて頂く前に
前提を簡単に整理しておきます。
有価証券報告書とは?
金融商品取引法で定められた企業の情報が事細かに記載された開示資料(事業年度毎の提出が義務)
平たくいえば、上場している会社が開示する必要のある、会社に関する全ての情報が記載された資料です。会社が一年に一回受ける健康診断とか人間ドックみたいなものでしょうか。基本的に資料に書かれていることは全て事実で、信頼でき、隠し事は無いとされていいます。
粉飾決算は、この資料などを誤魔化して書いたりすることで、会社の大小に関わらず、しばしば話題に上がります。
有価証券報告書の調べ方や読み方・見方については割愛しますが、公表されていて誰でも調べることが出来る情報なので興味のある方は頑張って調査してみて下さい。
以下では特定企業の有価証券報告書の一部を引用し、「年収」の部分に焦点を絞って取り上げます。なお、当ページで取り上げる数値はスカイマークを除き、2020年3月のものです。
年収について
当ページでは、有価証券報告書に記載の「平均年間給与」を「年収」として考えています。つまり、手取りではなく額面上の年額の給料を「年収」としています。年間給与な訳ですから、ここには賞与、いわゆるボーナスも含まれます。
話は少し逸れますが、連日の報道でも分かる通り航空業界はイベントリスクを常に抱えながら操業する業態のため、コロナのようなイベントが発生した際に対応出来る余地を作っておく必要があります。ボーナスを厚めに設定して、有事の際は調整出来るようにしておくことは、航空会社を操業する上では最低限のリスク管理なのかも知れません(全日本空輸(ANA)のボーナスカット)。
日本航空(JAL)のパイロットの年収
日本航空単体、グループ全体としての年収に関する指標を幾つか抜粋します。
- 日本航空(JAL本体、単体)
- 平均年間給与:約840万円
- 平均年齢:39.3歳(平均勤続年数14.5年)
- 日本航空グループ全体(連結)
- 平均年間給与:約670万円
- 職種別平均
- 地上社員:約570万円
- 運航乗務員:約2020万円
- 客室乗務員:約520万円
職種別平均は、日本航空グループ全体の数字として公開されていますので、完全子会社であるJ-Air(ジェイエア)やJTAなどの地上社員、運航乗務員、客室乗務員も含まれていることになります。
全日本空輸(ANA)のパイロットの年収
同様に、ANA HDの年収に関する指標を幾つか抜粋します。
- ANA HD(持ち株会社、単体)
- 平均年間給与:約740万円
- 平均年齢:45.8歳(平均勤続年数3.6年)
持ち株会社の数字のみが公開となっています。いわゆる本体と呼ばれる全日本空輸株式会社やANAグループ全体の職種別の社員の年収は記載されておらず、公開された資料からは把握出来ません。
ただし、注意書きにもある通り、ANA HDは「連結子会社である全日本空輸株式会社からの出向社員で構成」されています。契約内容次第ではありますが、一般的には給料は出向元から支払われ、出向元の規約に従うことになると思われます。
このことから、ANA HDの有価証券報告書に記載された平均年収は、全日本空輸株式会社の平均年収と大きな開きは無いものと考えられます。ただし、平均年収を押し上げる運航乗務員の母数がANA HDでは少ないでしょうから、全日本空輸株式会社の平均年収はANA HDよりも高いことが予想されます。
スターフライヤー(Star Flyer)のパイロットの年収
続けて、スターフライヤーの年収に関する指標です。
- スターフライヤー株式会社(単体)
- 平均年間給与:約600万円
- 平均年齢:38.1歳(平均勤続年数5.7年)
- 職種別平均
- 一般従業員:約500万円
- 運航乗務員:約1400万円
- 客室乗務員:約300万円
注意書きの通り、運航乗務員、客室乗務員には訓練生が含まれているようです。実際に第一線で運航を行っているパイロットやキャビンアテンダントのみに焦点を絞れば、年収はもう少し高いのでしょう。
SKYMARK(スカイマーク)のパイロットの年収
さて、最後にSKYMARK(スカイマーク)の年収に関する指標です。現在は上場していないため、2015年10月の民事再生手続き直前の数字となっています。
- スカイマーク株式会社(単体)
- 平均年間給与:約510万円
- 平均年齢:34.3歳(平均勤続年数3.8年)
- 職種別平均
- 一般従業員:約450万円
- 運航乗務員:約750万円
- 客室乗務員:約330万円
注意書きがややこしく書かれており、恣意的な数字の見せ方がしたかったのかなと疑ってしまいます。
運航乗務員については訓練生を含んでいるものの、客室乗務員は訓練生を含まない数字になっているようです。運航乗務員と客室乗務員で基準を分けた方が都合が良いことがあったのだと思いますが、想像出来ません。
エアラインパイロットの平均年収
以上の結果を元にエアラインパイロットの平均年収を考えると、最も母数の多い日本航空グループ全体の運航乗務員の平均年間給与である「約2020万円」がそれなりに妥当な数値と考えることが出来そうです。
全日本空輸のグループ全体の運航乗務員の平均年間給与も出ていれば、もう少し正確に把握することが出来ましたが、持ち株会社の数字のみの掲載となっていました。
さて。「約2020万円」をエアラインパイロット全体の平均として考えた時、やや高すぎる気もします。そこで、日本航空グループ全体の運航乗務員の平均年間給与と併せて、スターフライヤー、スカイマークの運航乗務員の平均年間給与も併せて考えて表にしたものが次の通りです。
平均年間給与 [円] | 従業員数 [人] | 重み係数 | |
日本航空グループ全体 | 20,225,000 | 2,766 | 0.89 |
スターフライヤー | 14,000,000 | 128 | 0.041 |
スカイマーク | 7,514,000 | 206 | 0.066 |
合算した平均年間給与 | 19,070,174 | – | – |
合算した平均年収は、全体の従業員数の和と当該会社の従業員数の割合から単純に重みを付けて計算しています。具体的には次のような計算を行いました。
- 従業員数の和 = 3100、日本航空グループの重み係数 = 2766/3100 ≒0.89、スターフライヤーの重み係数 = 128 / 3100 ≒ 0.041、スカイマークの重み係数 = 206 /3100 ≒ 0.066
- 合算した平均年収 = {(20,225,000×0.89)+(14,000,000×0.041)+(7,514,000×0.066)} = 19,070,174 円
計算方法が妥当かは分かりませんが、良い感じに全体の年収が少し下がったので、それっぽいと判断しました(適当ですいません)。
ということで、約1900万円を日本のエアラインパイロットの平均年収と考えることにしましょう。平均年収の計算方法はともかくとして、ここまでは一部を除き事実の列挙です。
さて、それでは、これらの数字から色々と考えを巡らせてみましょう。
内容が長くなり過ぎましたので、一旦ここで区切ります。考察についても興味がある方は以下のページも続けてご覧下さい。
以下の記事からの続きです。読んでいない方は、読んでからどうぞ。[sitecard subtitle=関連記事 url=https://studentpilot.xyz/fact-of-pilot-salary-vol2/ targe[…]
最後に
日本航空(JAL)を中心にエアラインパイロットの年収について、有価証券報告書をベースに色々と見てきました。
日本のエアラインで最も多くパイロットを抱える全日空グループの職種別の年収が分からなかったことは残念ですが、有価証券報告書を比較して眺めることで色々なことが見えてきませんか?
年収や記載した内容以外にも考察したいことあるのですが、また別のテーマとして取り上げたいと思います。
給料や年収に関する情報はゴシップ的な要素があるため、どうしても噂ベースの数字が独り歩きしがちです。有価証券報告書など、公式の資料に適切な時期に適切にアクセスして、正しい情報を知りましょう。
それでは、少しでも参考になった方は、いいねとかツイートとかよしなにやってみて下さい。少しだけ喜びます笑。