analytics

エアラインパイロットの平均年収と航空事業の構造について

analytics

以下の記事からの続きです。読んでいない方は、読んでからどうぞ。

関連記事

パイロットの年収が気になる皆さん、こんにちは笑!当サイトではパイロットの年収を統計とインタビューから考察した記事を多く読んで頂いています。[sitecard subtitle=関連記事 url=https://studentpilo[…]

salary

では早速いきましょう。

Advertisement

「平均年収」という言葉の罠

良く勘違いしがちですが「平均年収=自分が入社後に貰えそうな年収」と考えるのは大きな間違いです。

「平均年齢」と「平均勤続年数」がミソです。統計的には、記載の平均年収は、平均年齢になった時に、平均勤続年数を達成していれば一番近い数字になるということを表しているに過ぎません。それが平均の意味する所と理解するのが自然です。

平均年間給与の近くに「平均年齢」と「平均勤続年数」と添えてあることから、考えが及びそうなものですが、短絡的に「平均年収=自分が入社後に貰えそうな年収」と考えてしまう場合が多いため、注意が必要です。

パイロットとして入社しても直ぐにパイロットとしての平均年収が貰える訳ではない

「平均」について続けます。

有価証券報告書のパイロットの平均年間給与の中には副操縦士になったばかりのパイロットから定年手前の超ベテランの機長までがまとめられています。団塊世代のパイロットの退職の影響で深刻なパイロット不足が懸念される日本の航空業界において、パイロットの平均年齢が高いことは容易に想像出来ます。

スターフライヤーとスカイマークの有価証券報告書には職種別の平均勤続年数が記載されています。確認してみると、運航乗務員は他の職種と比べて、確かに平均年齢が高くなっています。日本航空グループ、ANA HDには職種別の記載が無いため不明ですが、職種別の平均年齢を比べた時、運航乗務員の平均年齢は高くなっているはずです。

母数の多い日本航空グループと全日空グループの数値が不明なため、仮説にはなりますが、スターフライヤーとスカイマークの運航乗務員の平均年齢からざっくりと考えてみると、エアラインパイロット全体の平均年齢は40歳〜50歳位と考えるのが妥当ではないでしょうか。

つまり、エアラインパイロットの平均年収である約1900万円の給料は40歳〜50歳になった時に初めて達成されそうだということになります。

キャプテンとコーパイロットの給与差

エアラインパイロットの年収の現実【統計データとインタビューで分析】」の記事でも書きましたが、日本に限らず世界中の航空会社でキャプテン(機長)とコーパイロット(副操縦士)の年収には大きな差があります。世界中どこでもだいたい、キャプテンの年収の60% – 70% がコーパイロットの年収に設定されています。責任に大きな違いがあるので、こんな感じになっています。

ここまで見てきた数値は当然、機長であるか副操縦士であるかなんてことは全く考慮されておらず、重み付けもされていません。ここにも注意が必要です。

エアラインパイロットとしての平均年収を達成出来るのは何歳ぐらいか?

ここまで書いてきたことをまとめると「エアラインパイロットとしての平均年収である約1900万円を達成出来るのは、40歳-50歳の間位で、機長に昇格したら」ではないかと予測出来ます。

パイロットの平均年収が約1900万円であっても、パイロットになった瞬間、つまり若くして約1900万円も貰えないということが理解して頂けるのではないかと思います。

一般の基準で考えれば十分に高い水準ですが、パイロットになるまでの道のりや資格を維持するための努力を考えると、個人的には妥当な数値では無いかと思っています。副操縦士全員が無条件で機長になれる訳でもないですし。

低運賃は安価な労働力で達成される

最後に、航空事業の構造についても考えてみましょう。

エアライン事業をやろうと思った時に航空会社が必要になる費用というのは世界中どこの国であっても殆ど同じで、次のようになります。

  • 機材費
  • 整備費
  • 燃料費
  • 空港等使用料
  • 人件費

上の4つはどこの国でも大きく変わりません。一つずつ見ていきます。

機材費

旅客機を製造している会社は世界中で数えるほどしかなく、調達価格に大きな差は生まれづらいです。契約の内容によっては、多少の変動はあるのかも知れませんが、基本的に価格は一定です。

整備費

整備に必要な部品も機材と同じ理由から調達価格に差は生まれづらいです。

燃料費

燃料費は市場で価格が決定されるため、まさにどの国でも調達価格に差は生まれません(規模の経済が働く場合もあるかも知れませんが、、、)。

更に、大きなエアラインになればオプション取引でヘッジング等もしますが、インパクトのある違いが生まれる時は決算に関するニュースでも報じられる位なので、稀な事です。

空港等使用料

空港等使用料は、国や就航する機材、使用するサービスの内容によって差が生まれる部分もありますが、本質的に差は生まれません。

国内LCCの優等生とされるピーチアビエーションは、ボーディングブリッジ・プッシュバックに用いられるトーイングカー・機体に移動するための空港内バスなどの使用をなるべく抑えることで費用を圧縮し、格安運賃実現の一助としています。

ピーチアビエーションでは格安運賃の実現に必要と思われることを数多くしていて、フルサービスキャリア・LCCに関わらず全ての事業者がマネするべきと思う施策があります。一方、私見ではありますが、Webチェックインを実現していない(2020年10月、執筆時点)のは「安かろう悪かろう」で、利便性を犠牲にして低価格を実現している一例ではないかと思います。

ただ、Webチェックインを喜んで使用するのが果たして旅客全体の何%なのかということを全く知りませんので、この辺りの事情も加味して「Webチェックインのシステムは作らない」という経営判断になっているのかも知れません。

人件費

大きく変化するのは最後の人件費(運航乗務員、客室乗務員、地上社員の給料)です。

「貨物・旅客の二地点間の安全かつ迅速な空輸」という本質的には同じ商品を提供しながら、フルサービスキャリアとLCCの料金が異なるのは何故でしょうか。

ピーチアビエーションを例にとると、低価格運賃実現の理由付けは色々と出来ることは確かです。が、就航当時に低価格を前面に押し出し、大手二社と闘いを繰り広げたスカイマークを考えてみると、人件費は最も大きな要因と言えそうです。

比較年次にズレがあるため正確ではありませんが、例えば、スカイマークとJALグループのパイロット一人あたりの平均年収の間には約1300万円の開きがあります。単純過ぎますが、スカイマークの約200人分のパイロットだけの差で考えてみても、運航関連費だけで年間で26億円の差になります。

先の空港等使用料の調整だけでここまでの差を作り出せるかは疑問です。当時、スカイマークと同じ路線を飛ばしていた大手二社は低価格に追従しましたが、単一の路線で見れば利益は出ていなかったことでしょう。

つまり、提供するサービスの本質的な価値(どこに価値を見出すかは置いといて)が同じにも関わらず、低価格の運賃が提供出来る最も大きな理由は、安価な労働力では無いかと考えられます。航空会社各社の細かい数字をそれぞれ見ることが出来れば簡単に分かることなのですが、情報に限りがあるため断言は出来ませんが。

最後に

2回に分けて、有価証券報告書に記載の年収を元にエアラインパイロットの年収や航空事業の構造について考えて来ました。

これらの情報は誰でもいつでも簡単に見れる資料です。内輪の噂から真偽の定かでない情報を仕入れることも良いですが、公式の情報から確実な情報を仕入れて自分なりに考察して、自分の行動を決めていくことも重要ですよね。

当ページが皆様のお役に立てれば幸いです。

Advertisement