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パイロット訓練生の地上研修はあったほうがありがたい【全体像を考える】

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「地上研修は無い方がいいなぁ〜」

こんなことを聞くことがあります。

でもね。それって本当?そんなこと言ったらバチが当たりますよ?

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会社的には、地上研修が無いほうがコストは安くつく

新卒で採用を行っている企業ならば、どの企業でも同じですが、新卒で入社したばかりの右も左も分からない新人は基本的には赤字生産機であります。

高卒、大卒に関わらず、春先に一括で採用を行う日本企業ではもちろんのこと、ジョブ型と言われるような体系の欧米の人事システムでも、業界に入ってきたばかりの新人なら同じことです。

入社したばかりの新人を活躍出来る人材に育てることはコストのかかることなのです。それは、パイロットという職種であっても同じです。

パイロットであればパイロットとして、総合職なら総合職として、営業職なら営業職として、開発職なら開発職として、事務職なら事務職として、、、

こんな風に、採用された職種の中で早く戦力になるように研修を行うことが最もコストを抑えられる方法のはずです。ですから、一見すると、パイロットとして採用された新人に地上研修を実施することは企業側から考えても合理的な考えでは無いような気がしてきます。

だからこそ、冒頭の「地上研修は無い方がいいなぁ〜」なんて事が言われるのかも知れません。

でも、それ、違います。

こんな風に思っているのが、あなただとしたら「地上研修してくれて、ありがたい」と思うべきです。

理由は大きく2つです。

  • 会社としては、長くあなたに居て欲しい(パイロットという職種は長年勤めて貰わないと会社としてペイしない)から、地上研修も含めてしっかりと人材教育をしたい
  • 一般的な企業であれば、全体像を学ぶ機会が得られるのは総合職のみ

長くなりすぎるので、1つ目の理由だけ少し深堀りしてみましょう。

会社がパイロット訓練生に地上研修を行うのは長期に滞在して活躍する人材になって欲しいから

繰り返しになりますが、未経験者を一人前の人材にするのは、どの業界でもコストがかかりますが、パイロットならなおのことです。

例えばですが、あなたが一人前の副操縦士になるまでにかかるコストが1億円だとしましょう。

そうすると、一体どれだけの額(どれだけの期間)を「売上」という形で会社に貢献すれば、賭けてもらった(笑)、コストを賄うことが出来るのでしょうか?1億円?倍の2億円?検討もつかないですか?

それなりの道筋を立てて考える方法は幾つかあるとは思いますが、今回は簡略化した方法で一つ紹介してみます(色々な前提をふっ飛ばしてますので、ツッコミどころ満載だけど許してね)。

世界の航空会社の平均の営業利益率は約5%

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この記事でも取り上げていますが、世界の航空会社の平均の営業利益率は約5%です。航空会社が本業で残せる利益が5%ということです。言い換えると、5%の営業利益を作り出すために、100%の売上を作らないといけない訳です。

先程の「賭けてもらったコストを賄う」だけの売上に戻りましょう。副操縦士になるまでにかかった1億円のコスト。仮にこれが無ければ、そのまんま本業の利益である営業利益が増えることになります。つまり、残そうとすれば残せる営業利益を削って副操縦士の養成に使っていると言い換えることが出来ます(そうしないと事業継続出来ない訳ですが・・・)。

そうすると、削られた営業利益の分、ここで言うと1億円(5%)分の営業利益を作るためには、余分に20億円(100%)の売上を作らなければいけません。ということで、仮に副操縦士の養成に1億円がかかるとすれば、企業としては、20億円分作ってもらうまでは少なくとも真っ赤っかということになります。大変だね・・・。

長くなるので割愛しますが、ここから更にどれだけの便(どれだけの時間)を企業のために働けば良いかということを考えたければ、①企業毎の年間便数と売上から便あたりの売上を求め、②年間便数と乗員数から乗員一人あたりの担当便数を求めれば、どれだけの期間を在籍して、どれだけの便数を飛ばせば、やっと貢献出来そうということが分かります。

計算すれば分かりますが、きっと想像するよりも長い期間が計算結果として残るはずです。

パイロットの養成にはライフタイムバリュー的な視点が不可欠(多分)

ライフタイムバリューという考え方がマーケティングの世界にはあります。これを今の題意に当てはめて超簡単に考えると、新規人材の獲得は非常に難しいから既存の人材を大切にしようということになります。

その結果が、地上研修という形で現れていると考えて良いでしょう(知らんけど・・・笑)。

最後に

まとめているうちに話が散らかってしまいました。

結論として「パイロット訓練生の地上研修はめちゃくちゃありがたいこと」なので「地上研修イラネ」と言っている方にはバチが当たりますよ、ということがお伝え出来れば良いかなと思って書いてみました。

訓練投入決定までの準備期間という本稿では全く触れていない考え方もあるかも知れませんが、金勘定の現実問題として、今回紹介した様な内容が裏側にあるということは何となく知っておいても悪くないかと思います。