自費でプロのパイロットになろうと検討している社会人の皆様、こんにちは!
メールマガジン読者の方からの問い合わせで「自費訓練生は、どのように資金を準備されているのかサイトにて取り上げて頂きたい」とご要望を頂きました。
確かに気になりますよね。
自費訓練生の9割近くが目指すエアラインパイロットに、ゼロから、かつ、日本でなろうと考えると、1500万 ~ 2300万円の訓練費がかかります(選ぶルートによって異なるため、幅があります)。
※ 大学生として大学系で取得する場合はこれ以上にかかることもザラです。
自費訓練生のボリュームゾーンである20代後半から30代前半の若者が、この資金を自分の力だけで用意出来るのは中々珍しいパターンです。ですから、一般的には、自費でパイロットを目指す人の多くは借金(ローンなど)をして、訓練費を捻出しているとされています。
本当でしょうか?
今回は、その辺りの「自費パイロット訓練生の懐事情」のリアルをお届けしようと思います。
※ 民間フライトスクールを中心とした事情であること、少ないサンプル数であることを念頭に「参考程度に」続きを読んで頂ければ幸いです。
訓練費の調達方法インタビュー結果総括
まずは結論から。
今回、フライトスクール・大学系の訓練生11人にインタビューさせて頂きました。いずれも私が訓練を進める中で知り合った、直接面識のある方々にご協力をお願い致しました。簡単に結果をまとめたものが次の表です。
年齢 | 職歴 | 出身ソース | 調達方法 |
10代 後半 | なし | 民間フライトスクール | 親類 全額援助 |
20代 前半 | なし | 民間フライトスクール | 親類 全額援助 |
20代 後半 | なし | 民間フライトスクール | 親類 全額援助 |
20代 後半 | あり | 民間フライトスクール | 自費 + 借金(訓練ローン活用) |
20代 後半 | あり | 民間フライトスクール | 自費 + 借金(親名義) |
20代 後半 | あり | 民間フライトスクール | 自費 + 親類援助 |
30代 前半 | なし | 民間フライトスクール | 親類 全額援助 |
30代 前半 | あり | 民間フライトスクール | 自費 + 借金(訓練ローン活用) |
30代 後半 | あり | 民間フライトスクール | 自費 |
20代 後半 | あり | 大学系 | 自費 + 親類援助 + 借金(奨学金) |
20代 後半 | なし | 大学系 | 親類 全額援助 |
個人の特定に繋がる可能性のある情報のため、具体性を落としてまとめています。
数字で考えると、11人中4人、率にして約40%の訓練生が何かしらの借金をしている結果となりました。借金をしていない訓練生の多くは就業経験の無い方ということも分かります。
現実問題、借金をしている訓練生・していない訓練生のギャップは非常に大きいです。衣食住の違いは分かりやすい例の一つです。
私の周りでは縁がありませんでしたが、スポーツカーで訓練に来る訓練生も居ると聞いています。自費でパイロットを目指す世界はそんな高低差が存在する世界です。
訓練費調達方法は分類すれば3つ
限られた世界の少ないサンプル数ではあるものの、インタビュー結果から訓練費調達方法は大きく3つに分類出来ることが分かります。
①親類からの全額援助
結果だけを見れば最も多数派の調達方法となりました。分かりやすいので、特記は必要ないでしょう。
親類が事業を営んでいる方で、訓練費の捻出を工夫している方もいらっしゃいました。
②自費調達+借金(or 親類からの援助)
今回の結果では、総訓練費の50% ~ 60% を借金している方が多い結果となりました。額にすれば、700万 ~ 1100万円程度の借金をしているということになります。全額を借金で賄っている方はおりませんでした。
借金の方法については、①訓練ローン(提携スクールのみ)②地銀からの個人(教育)ローン③日本政策金融公庫教育ローン(親名義)の3つになりました。
親類からの援助を受けている方に関しては、総訓練費の 70% ~ 80% を親類からの援助で賄っているという数字になりました。
いずれにしても、自費で調達出来たのは「頭金」と言った感覚です。ボリュームゾーンの年齢を考えればそれなりに納得感のある数字です。
③全額自費調達
このページを読んでいる方が最も気になるのは、ここではないでしょうか。
「全額自費調達」というのは非常に稀です。といいますか、日本で最初からエアラインを目指す場合は現実的な選択肢にはなり得ません(※ただし、自衛隊経験者の方や航空大学校を途中で抜けた場合は変わってきます)。
2つの背景が存在します。
- 日本でエアラインパイロットを目指すと実質的に年齢制限が存在する(前例が少ない)
- 日本でエアラインパイロットになろうとすると前述の通り1500万 ~ 2300万円近い訓練費が必要
つまり、全額自費で1500万 ~ 2300万円近い訓練費を用意出来る頃には年齢制限に差し掛かっているため、現実的な選択肢にはなりにくいということです。
今回インタビューさせて頂いた「全額自費調達」の方もアメリカでの教官等の経験を経て、現在は日本の使用事業に従事されております。
借金で訓練費を調達することについて
相談を受ける中で「親には頼りたくない」と仰られる方がおられます。そういった方にとっては借金で訓練費を調達することも現実的ではありません。
連帯保証人なしに「パイロットになりたいから金を貸してくれ」と言ってお金を貸してくれる金融機関は、私の知る限りでは存在しないからです(あったとしても手を出してしまうと、パイロットを目指すどころでは無くなると思います)。
「俺は自分で借金して誰にも迷惑をかけずにやってるんだぜ」という勘違いな方も稀におりますが、十中八九、その借金が出来ているのは、連帯保証人である親類が長年に渡り積み上げてきた信用のお陰です。
何が言いたいかと申しますと、自社養成でも、自衛隊でも、航空大学校でもなく、自費で最初から日本でエアラインのパイロットを目指そうと考えるのならば、周りの何かしらのサポートはほぼ確実に必要になります。
ただし、先の例にも挙げた通り、飛行機のパイロットとしてならば、周りのサポート無しで目指せるかも知れません。それでも、お金を貯めることが出来るまで一人で勝手に育った訳では無いはずですので、周りへの感謝やこれまでのサポートに対する感謝を忘れずにそれぞれの道を進むことが肝要と考えます。
まとめ
私の身の回りのパイロット訓練生の実際の懐事情についてお伝え致しました。少しでも、これから始めようとしている方の参考になれば幸いです。ただし、「所変われば品変わる」といったもので、場所によって実情が大きく異る可能性があることをご了承下さい。
今回のような内容をお届けしているのは、Web広しと言えども、当サイトのみと自負しております。今後も他には無い内容をお届けしていきますので、どうぞ宜しくお願い致します。
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「借金をしてエアラインのパイロットになって実際に返済が出来るかどうか」この辺りの実際の金勘定を考えてみたい方は以下のページも参考に頂ければ幸いです。
最後になりますが、これから自費でパイロット訓練を始めようと思っている方向けのページを用意しました。ご覧下さい。