空の交通である航空交通管制(ATC)が提供されていたり、空港が当然の様に整備されているからこそ、私達のようなパイロット訓練生を含めた全てのパイロットが飛行機を飛ばすことが出来ます。
これらのインフラは果たして、誰が・どうやって・いつ管理してくれているのでしょうか。
ご存知、国土交通省航空局です。
※ 空港については、県営空港や民営空港もありますが、航空交通管制は日本国内においては全ての業務を公務員である航空交通管制官・情報官(一部、自衛官)が行っています。
航空局の予算を見たことがあって、その予算について思いを馳せたことがあるパイロットはどれくらい居るのでしょうか。航空局の職員であるパイロットを除いて、多分居ません。
今回は、パイロット達にもっと語られて然るべきなのに、話題に挙がることのない「航空局の予算」について見てみましょう。
国土交通省航空局の年間予算
国土交通省航空局の予算は、予算要求・予算決定の概要が公開されています。
2019年の予算決定概要と2020年の予算要求概要をザッと見てみると、官僚の頭が良い人が作った資料とあって非常によく出来ていて、読みやすいです(ヨイショは忘れてはなりません笑)。
この記事では、基本方針・予算総括表の2つを2019年、2020年でそれぞれザックリと見比べてみることにします。
航空局関係予算の基本方針
2019年 | 2020年 |
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2019年
「来る東京オリンピックの開催の準備に予算をガッツリ入れまっせ!」という意思がヒシヒシと伝わってくるような基本方針ですね。それぞれ、感覚値としても一致する気がします。
「首都圏機能の強化」
言わずと知れた羽田空港の発着枠の増便ですよね。経路選定のための調査、計器進入方式の設計等に予算が組まれたものと推察されます。
先日、「002/20 クラス C空域の一時設定について (東京国際空港)」という形でAIP SUPでも発行されていました。いよいよ羽田空港への新しいルートの運用が始まる訳ですね。
「地方空港等のゲートウェイ機能の強化」
「地方空港等のゲートウェイ機能の強化」は、3つの軸で考えられていますが、要は地方活性化のために空港やルート、規制、その他諸々やることやりまっせと言う所でしょう。
例を取って考えてみても非常に力を入れていて、結果も付いてきている気がします。
「羽田」一人勝ち、大競争時代に生き残る空港はどこだ?(タイトルはちょっとあれですが、民営化されてから仙台空港の定期就航便が10倍に増えたことが触れられています)- 南紀白浜空港 民営化スタート
- 「みやこ下地島空港ターミナル」、3月30日のオープン前に内覧会。開放感あふれる新しい沖縄・宮古島の玄関
2020年
2019年で燃え尽きてしまったのか、突然基本方針が「ふわっ」とした印象になりました。明確な「オリンピック」というマイルストーンが無ければ、こんな所でしょうか。
「安心・安全を大前提としながら利便を促進するために、こんなことが必要だよね」をベースに組まれた基本方針ですね。
航空局関係概算要求総括表
※ 容易に比較出来るよう、画像にて一部の表を拝借しておりますが、書類へのリンクを年度に付けてありますので、詳細は国土交通省のホームページをご覧下さい。
2019年 | 2020年 |
上段には、「自動車安全特別会計」などと書いてあって良く分からなかったので調べた所、自動車安全特別特別会計は4つの勘定に区分され、ここで言う所は「空港整備勘定」に当たるようです。平たく言うと下記のようになります。
航空運送事業者等からの空港使用料収入や一般会計(一般財源+航空燃料税収入)からの繰入金等を財源として、空港整備事業、環境対策事業、空路整備事業、空港等の維持運営等を管理するための会計。
このことを念頭に筆者が気になった点について取り上げます。2020年の予算要求と2019年予算決定を比較することにどれほどの意味があるのかは分かりかねますが・・・。
※ 専門家ではありませんので、読み取りの正確性については保証致しませんことをご了承下さい。
- 一般空港等からの空港使用料収入が35%増加(基本方針の「地方空港等のゲートウェイ機能の強化」でもあった通り、かなりインパクトのある数字です)
- 航空路整備事業が25%増加
- 無人航空機の安全対策に関する予算が270%増加(とんでもない勢いで無人航空機が増えている様子が伺えます)
- 次世代航空機の社会実験に向けた環境整備の推進に関する予算が940%増加(何故、突然急激に増えているのか・・・。重い腰を上げるのに時間がかかったのか、それとも2020年だけなのか今後も継続的にチェックする必要ありですね)
まとめ
近い様で遠い存在の航空局。
航空局の予算がどんな風に使われたのか、どの様に使われるのか、これが分かれば日本の航空業界の大きな流れが理解出来ます。
日本の航空業界の大きな流れを理解して、自分の立ち位置を理解しておけば、自分のパイロットとしての目標を実現するために何をしなければならないかが自然と理解出来るのでは無いでしょうか。
今後も航空局の予算から、少しでも自分の役に立つような情報を抽出出来ると良いですね。