航空機のパイロットを目指す人であれば、必ず目指すことになるのが「機長」。
様々な事業を行うパイロットがいますが「機長」を目指し、それを維持しようと努力するのは、全てのパイロットに共通するはずです。漠然と機長になりたいと思っている方もいれば、明確な「機長像」みたいなものを持っている方もいるでしょう。
今回は、航空従事者技能証明の停止・取り消しの事例から「機長になる」ことの意味について考えてみます。
航空従事者技能証明が停止・取り消しされる場合
航空法30条(技能証明の取消等)に、以下のように記載があります。
国土交通大臣は、航空従事者が左の各号の一に該当するときは、その技能証明を取り消し、又は一年以内の期間を定めて航空業務の停止を命ずることができる。一 この法律又はこの法律に基く処分に違反したとき。二 航空従事者としての職務を行うに当り、非行又は重大な過失があつたとき。
航空従事者技能証明の停止・取り消しの具体事例
具体事例は国土交通省の「航空従事者等に関する行政処分について」にまとめられています。
事例を見る限り、よほどの事がなければ取り消しはされないようです。興味深い事例の一部を引用したものが下記の表です。
行政処分の内容 | 具体的事例 |
資格停止 10 日 | ・滑走路をオーバーランした。(定期運送用操縦士) ・未供用の滑走路に着陸した。(定期運送用操縦士・事業用操縦士) |
資格停止 1 年 | ・複数の法令違反(航空身体検査証明の不適切な取得、航空機の運用限界を超える運航)を伴う運航で航空事故を発生させた。(自家用操縦士) |
資格取り消し | ・複数の者に対し、操縦教員の地位を利用し虚偽の操縦訓練の飛行時間の証明を行った。(操縦教員) |
詳細が掲載されていないので、何とも言えませんが、これをどう思いますか。厳しいのでしょうか。ゆるいのでしょうか。
「機長になる」ことの意味
厳しいと思うかゆるいと思うか、意見が分かれる所です。
前表で挙げた「滑走路をオーバーランした。(定期運送用操縦士)=資格停止10日」事例について、掲載されていない詳細の部分を想像で考察してみましょう。
文面からは「定期運送用操縦士の資格を有するパイロットが滑走路をオーバーランしたから資格停止10日の措置を受けた」と受け取れます。
が、機長は運航の全責任を負います。この事例のパイロットが、仮に二人乗りの飛行機に乗務していたします。着陸を副操縦士にやらせた結果、オーバーランが発生、結果、資格停止10日。
このようなシナリオだった場合でも前表と同じ表現になる確率高いでしょう。
前者の場合でも後者の場合でも、重要なのは機長が全責任を持つということです。「機長になる」というのは、そういうことなんですね。
他人(副操縦士)の失敗で何かが発生しても責任は機長です。ですから、副操縦士の内に(責任が無い内に)沢山の経験を自分でしておくというのが、重要になるそうです。
「他人の褌で相撲を取れる最後の機会にして、最も大事な期間」
先輩の副操縦士の方が仰っていました。
航空従事者技能証明の取り消し後、再取得出来るか?
仮に取り消しを受けた場合、再取得出来るのかという問題です。技能証明の取り消しをされても、飛行経験は当然残りますからね。
航空法27条(欠格事由等)には以下のようにあります。
第三十条の規定により技能証明の取消しを受け、その取消しの日から二年を経過しない者は、技能証明の申請をすることができない。2 国土交通大臣は、第二十九条第一項の試験に関し、不正の行為があつた者について、二年以内の期間に限り技能証明の申請を受理しないことができる。
最後に
航空従事者技能証明の停止・取り消しの具体事例を通じて、「機長になることの意味」を再考するキッカケになれば幸いです。
機長になってから引退するまで、事故なく、免許の停止・取り消し、その他のトラブル無く無事に終えれる方は本当に凄いですね。これを目指して頑張りましょう。
最後になりますが、訓練を初めたばかりの訓練生向けのまとめページも用意しました。ご覧下さい。