パイロット訓練・養成を行う大学が増えてきました。ただ、実際は大学が直接操縦訓練を提供している場合は少なく、提携校という形で操縦訓練を外部の民間フライトスクールに外注している大学が多いです。
大学の数が増え、情報も断片的なことが多く、全ての大学を網羅的に調べるのが難しくなりつつあります。そこで、パイロット養成・訓練のための学部・学科を持つ日本国内の大学をまとめました。比較のために提携校、指定養成の有無、就職実績、参考リンクについて記載しています。
トップ画像にて各大学のロゴを拝借させて頂いております。不都合の場合、大変お手数おかけ致しますが一報頂ければ幸いです。速やかに削除致します。
はじめに(注意点)
本題に入る前に学校選びの注意点について簡単にまとめます。
学費について
学費(訓練費)については、前提条件によって最終的な費用が大きく変わります。取得出来るライセンスは何なのか・費用計算は最善の場合と平均のどちらかで行われているのか・ビザ申請の費用は含まれているのか、、、などなど数えていけばキリがありません。
学費に関する条件は多くの方が気にされる所ですので、大学毎に十分に精査した上で比較することを強く勧めます。
就職実績について
就職実績については、公表されている数値があれば、引用して記載しています。
どの大学も就職実績が重要な数値の一つとなることを把握していますので、前提条件を有利に設定して就職実績の数値を引き上げている場合があります。
正しい就職実績を把握するために「実際に通っている訓練生」に話を聞いてみるべきです。友達になる所からスタートですが確実です。殆どの場合、訓練生であれば同期の就職状況を把握しているので、実際の就職実績に近いものを知ることが出来ます。
多くの方が気にされる学校の「評判」についても、公式サイトや人づての情報だけを鵜呑みにせず現役の訓練生に聞いてみるのが最善です。学校担当者からは言わないようなことも確認した上で、最終的な進路を決めることを勧めます。最も重要なのは実態です。
「未来のパイロット」奨学金について
当ページで紹介する大学は、工学院大学を除き、全て「未来のパイロット」奨学金プログラムと提携しています。
「未来のパイロット」奨学金とは、パイロットを希望する方に対し、訓練費の一部を無利子貸与型奨学金として支援するプログラムです。一般社団法人航空機操縦士育英会の主導で、多くのパイロットを目指す方への就学機会の拡大を担うことが目的とされています。
大学毎に奨学金プログラムの募集定員が定められており、3 ~ 5名が定員となっています。東海大学のホームページに令和二年度の「未来のパイロット」無利子貸与型奨学金募集要項が掲載されています。ご興味の方は参考までにご覧下さい。
それでは、上記を念頭に置いた上で各大学を見ていきましょう。
東海大学(航空操縦学専攻)
- 提携校
- 米国・ノースダコタ大学
- 指定養成:有り(事業用、計器)
- 実績:フルライセンス取得者全員が操縦士訓練生として航空会社に採用(公表数値無し)
- 参考リンク
ANA(全日本空輸)の全面的協力、国土交通省の支援があるのが最も大きな特徴です。国内の大学で最初に指定養成施設の認可を受けているのもポイントが高いです。
アメリカで訓練しながらJCABの全ての免許を取れるという唯一無二な存在ですが、日本を飛ぶことになるパイロットとして、それが良いか悪いかは分かりません。
実績として、数値ではなく「フルライセンス取得者全員が操縦士訓練生として航空会社に採用」と公表しているのは好感が持てます。就職実績を100%として公表したい所をグッと抑えたであろう感じが伝わってきます。
法政大学(航空操縦学専修)
- 提携校
- 本田航空
- 指定養成:有り(自家用、事業用、計器)
- 実績:-(公表数値無し)
- 参考リンク
国内で全ての訓練を実施し、自家用・事業用・計器と全ての指定養成認可を受けているのが特徴です。
民間訓練校として古くから運営を行っている本田航空と提携しているのも安心感があります。
紹介している大学系の施設の中で、唯一公式のYoutubeチャンネルの動画が見つかりませんでした。
崇城大学(航空操縦学専攻)
- 提携校
- 無し(全て国内一貫で自前で訓練環境を用意)
- 指定養成:無し
- 実績:-(公表数値無し)
- 参考リンク
国内一貫で、かつ、全ての訓練を大学側で管理しているのが特徴です。自前でパイロット訓練・養成している唯一の大学とも言えます。熊本空港で訓練を実施しています。
広告も積極的に出しているようで、崇城大学のパイロットコースの看板や吊るし広告を見かけることが多い気がします。
桜美林大学(フライトオペレーションコース)
- 提携校
- L3
- -(日本での提携校不明)
- 指定養成:無し(かつて指定養成だったが、問題があったため自主返上)
- 実績:100%
- 参考リンク
ホームページを拝見する限り、JCABの事業用・計器をフロリダで取得することになっています。既に指定養成施設を自主返上しているため、フロリダでJCABの免許を取得するのは不可能と思われます。
日本において自前の訓練環境が整えられているのか、提携校があるのかは不明です。ご存知のがいらっしゃればコメントにてお知らせください。
第一工科大学(航空工学科パイロットコース)
- 提携校
- Pan Am Career Flight Academy
- 佐賀航空
- 指定養成:無し
- 実績:100%
- 参考リンク
1955年開校の南日本飛行学校というフライトスクールを起源とする私立の工業大学です。飛行教育の歴史は一級品です。
東海大学を始めとする他の私立大学の資本力・政治力に押されている感じですが、長い「歴史」に説得力を感じます。鹿児島と上野にキャンパスがあるようです。
千葉科学大学(航空技術危機管理学科パイロットコース)
- 提携校
- ヒラタ学園
- 指定養成:無し
- 実績:-(卒業生がまだ居ないため)
- 参考リンク
学校法人加計学園が運営元です。昨今の報道の影響でネガティブなイメージが先行してしまいますが、裏を返せば、政治的な繋がりも色濃いことも考えられます。航空業界は政治的な繋がりの強い業界なので、考え方次第ではポジティブに作用する可能性もあります。
卒業生にお話を伺った所、大学キャンパスは千葉県銚子、飛行訓練はヒラタ学園のホームである神戸空港で行うようです。学生数も右肩上がりで増えいているそうです。
日本初導入のフルフライトシミュレーターを使用した教育も行っているのが興味深いです。
工学院大学(先進工学部機械理工学科航空理工学専攻)
- 提携校
- 大阪航空
- ホンダ航空
- SkyCreation(アメリカ)
- 指定養成:無し
- 実績:-(新設のため)
- 参考リンク
2019年4月より新設。コースが多く用意されていて、全体像が把握しづらいです。
一期目、二期目など開講当初は学校側も特に力を入れるはずですので、手厚いサポートが受けられそうな気がします。
これから走りだしていくことでしょう。
まとめ
パイロットを目指すことが出来る国内の大学だけでもかなりの数があります。沢山の情報をWebサイトから簡単に手に入れることが出来ますが、大学を決める前に自分の目・耳・肌で実態を感じとってみることをお勧めします。
比較に際して、重視するパラメータ(就職実績、機材数、教官数、などなど)を決め、点数をつけて、自分なりの総合点を出してみるのも良い方法です。
もし、私が高校生で、お金があって、高校を卒業した後に大学に行きながらもパイロットとしての道をすぐに始めたいと決めた場合、東海大学、桜美林大学の二校から研究します。政治力と資本力を背景にした実績は魅力です。
パイロット養成・訓練を行う民間のフライトスクール(民間訓練校)も重要な選択肢の一つとなります。民間のフライトスクールについては、下記のページでまとめています。併せてご覧下さい。
日本国内で自費でパイロットを目指す際に重要な選択肢の一つとなるのが、民間のフライトスクール(民間訓練校、以下フライトスクールで統一)です。大学系の養成施設とは異なり、パイロット養成・訓練を行う国内のフライトスクールは最近になって突然[…]
当ページの情報は随時最新のものに更新していますが、時間の経過に伴い古くなっている情報がございましたら、コメント欄よりお知らせ頂ければ幸いです。
本記事が大学のパイロット養成コースに進学を考えている方のお力になれることを願ってやみません。
これから自費訓練を始めようと思っている方向けのページも用意していますので、併せてご覧下さい。
日本国内のフライトスクール・大学・フライトシムについてまとめた地図を作成しました。当ページと共に進路選択等にご活用下さい。