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テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故【航空機事故学習忘備録 Vol.1】

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テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故。航空業界に身を置く方なら知らない方の方が少ない、史上最悪の航空機事故の1つです。航空安全の教育で取り上げられることも多く、航空安全における一般教養の1つと言っても差し支えないでしょう。

テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故に関連する書籍は山のようにあります。私もそのような書籍や今回紹介するような動画から航空安全の学習を行いました。これらの資料はボリュームが多く、一度学習した後に再度学習しようとしても、中々腰が上がりません。

そこで「①事実②考察」に分けて、航空安全について学習した所を残しておくこととしました。これから学ぶ方の取っ掛かりになれば幸いです。

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「テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故」事実の整理

こちらの動画が非常に勉強になります。

事実を時系列で箇条書きにしてみます。

  1. グラン・カナリア空港でテロ発生
  2. グラン・カナリア空港閉鎖
  3. グラン・カナリア空港に到着予定の多くの旅客機がテネリフェ空港へ目的地変更
  4. テネリフェ空港は休日のためスタッフが通常より少数
  5. 「目的地変更、休日の少数スタッフ」の影響で、テネリフェ空港管制官が高負荷状態
  6. テネリフェ空港の気象条件が徐々に悪化
  7. 機上の運行関係者は、地上で長時間待たされてストレスが蓄積
  8. 「左席に俺が座っている限り判断は全て俺がする」という姿勢のKLM機長
  9. 定石とは異なる量の燃料を積んでKLM機はランプアウト(Vrに達するまでの時間を増加させた)
  10. テネリフェ空港の気象条件悪化に伴い、管制官は気象条件が完全に悪化する前に可能な限り出発させたかった
  11. 管制官と同じく、地上で待っていたパイロットも気象条件が完全に悪化する前に出発したかった
  12. KLM機の機長は操作(チェックリスト、エンジン始動)を一人で実施
  13. 気象条件の悪化に伴い、地上では、パンナム航空機が管制の指示通りに動くことが困難に(RVR700m)
  14. 管制官は、大型機が旋回できない誘導路への進入を指示(管制官は、普段見慣れない飛行機の性能を理解していなかった)
  15. 管制許可を受けていないKLM機が、機長の操作と判断のみで離陸を開始
  16. パンナム機は、管制官にKLM機を止めるよう要請したが、指示は勘違いして理解された
  17. 衝突事故発生
  18. 悪天候(霧)の影響で事故発生後、状況把握に時間を要した
  19. 火災を誘発

「テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故」の考察

管制指示違反は最も危険なことの1つ

改めて考える必要も無いくらい当然の帰結に達しました。「ATCをないがしろにしたこと」が最も致命的な出来事だったと言えます。

「幾つものゲートを通過しなければ、航空機事故は発生しない」という表現があります(スライスチーズの穴で説明される場合もありますね)。テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故でも同じ様に、事故発生を避けることが出来た幾つものタイミング(ゲート)がありました。

管制指示は最後の砦であり、明確に事故を避けることが出来たゲートの1つでした。問題は、事故に登場する三者(KLM機、パンナム機、管制官)全員が一度かそれ以上、曖昧なATCのやりとりをそのままに何らかの指示・操作を行ってしまったことです。

パイロットがなすべき仕事の優先順位

  1. Aviate(飛行機を飛ばすこと)
  2. Navigate(目的地まで辿り着くこと)
  3. Communicate(無線電話による管制や他の乗員とのコミュニケーション)

パイロットがなすべき仕事を優先度が高い順に列挙すると上のようになります。操縦教育を受ければ知らないことの方が難しい程、基本的な事項です。

最も優先順位が低いこと(Communicate)が引き金となり、史上最悪の航空機事故が起きているということは興味深いです。

最後に

最も安全な乗り物の1つとされながらも、一度事故を起こすと、多くの犠牲者を出してしまう特性が知られている航空機事故。事故が発生すれば多くの人が知る所になりますが、事故を防いでもそれが知られることは特殊なケースでなければありません。

自ら過去の事例から学び、事故を防げる要因を自分なりに考えておくことが、有事の際に命運を分ける要素になるのでしょう。

今後も航空機事故について学んでいきます。